ヨセミテ国立公園(2019.9.7-9.16) 準備編(後編:トレーニングとギア)

前の記事からの続きです。
今回は準備編のトレーニングです。
あと後出しじゃんけんですが、ギアについても何を準備したのかを書いておこうと思います。

まず、ヨセミテでのクライミングの内容についてあまり詳しく無い方に僕なりの解説を。
あくまでも僕なりの意見ですので、間違いあるかもしれませんが…。

ヨセミテのクライミングは通称トラッド、トラディショナルクライミングと呼ばれるものが主体です。
ここであえてクラックが主体と言わなかったのは理由があります。
・フェイス、スラブ、クラック、なんだろうがほぼNP(ナチュラルプロテクション)を設置し登る
・ビレイ点、終了点がなくNPで構築する
・つまりは登った後は何も後に残らず、岩をそのまま自然に近い状態に保つ
上記のスタイルはトラディショナルクライミングの理念に基づいたものであるからです。

クラック登りが主体で間違いありませんが、ヨセミテにはクラックではないフェイスのルートも存在します。まぁそれでも多分8.5割型クラックルートだと思いますが。
もちろんボルトが設置されているルートもありますが、基本的に多くのルートがナチュラルプロテクションを設置し、ランニングビレイをとります。

で、ヨセミテでクライミングをするにあたって上記のクライミングスタイルの技術が必要です。
ヨセミテに行きたい!という人は何をするべきなのかと聞かれると、
まず「これを習得してください。」となります。
正確に記述すると
・カム、ナッツ、その他のNPを使用した登攀技術(支点構築での使用方法の熟知等も含む)
・マルチピッチクライミングの技術(ロープの流れ、フォローのビレイ、懸垂下降等含む)
・クラックを登る技術があること
実はこれ、アルパインライミングやってる人なら当たり前の技術ですね。
アルパインやってるよという人はもうすでに全てクリアできていると思います。

じゃ、私はどういう状態でヨセミテ入りしたのかを明確に記載します。

 Climberhey317のクライミング能力等経歴(2019年6月当時)
スポートルート:5.11b/cをMOS(鳳来の比較的お買い得なルートで実質10cくらい)

マルチ経験:
御在所前尾根複数回
大台ケ原サマーコレクションつるべでリード
二子山中央稜全リード、その他色々。

クラック:瑞浪名張トップロープで触る。当時まだクラックのまともなルートのリードRP歴なし。

リード自体は山岳会に入ってから本格的に行きだしたので2年半くらい
ボルダリングは入会前からやっていたので、クライミング歴トータルで見ると5年たったか経たないかくらい。(間に半年怪我でやらなかった期間があったりした。)
という、特にクラックに関しては入会してから始めたので、いまだにへっぽこです。
でこの時点ですでにNPを使用してのクライミングはしていたわけです。またマルチピッチでの登攀技術に関しては問題ないレベルでした。

レーニング編
ヨセミテに行くとなってやはり焦点をおいたのはクラックの技術です。
RP歴が1つもない状態で行くのは流石にやばいというか、自分自身がどこまでできるかのラインがわかっていない状態のため、超不安。その上足を引っ張る可能性がある。
そこで最低目標として
「小川山にある5.9のまともなルートをRPする」
というのを目標にしました。
で、7月くらいから特訓開始予定が雨と重なり8月頭となり小川山に2度行く予定が1度、名張が1回、瑞浪が1回。

特訓1回目 2019/8/3 名張 第一岸壁
クソ暑い中でしたが、直登とこれなんですかをトップロープで触る。あと確か何か触ってるはず。
一年近くぶりの名張で、クラック登れるのか?という不安が大きかったけれど、ノーテンで登り切ることが初めてできた。次回はリードで挑戦だと決断した。
なばり

特訓2回目 2019/8/11~8/13 小川山
小川山レイバックとカミイルートという5.10b(お買い得?得意系だった?)をRP
二泊三日で行ったけれど、三日間とも雨との戦い、ルート待ちで思うようにたくさん登れず、特訓になったのかどうかも微妙。
小川山レイバックのクラック内部は濡れていた。磨きがかかった箇所がさらに滑る、手汗で余計に滑る。1日目TR,リード1トライ、2日目2トライ目でRPだったはず。
一緒にヨセミテに行くJさんが根っこで滑って岩に阻まれ顔から転ぶというなんとも痛ましい軽い怪我もあった。
RPしたトライの準備中(左)とRP後(右)の写真。
いつも以上に本当に緊張したし怖かっただけに、めちゃくちゃ嬉しかった。
IMG_5486.jpg  IMG_5487.jpg

特訓3回目 2019/8/23 瑞浪
クソ暑いのに瑞浪にクラックを練習しにいった。
ハッピークラックが5.9だと勘違いして取り付くも、できなかった。なんどもトライした。
なぜか気晴らしに原住民をトライして、あと2手で終わるところで手汗がひどすぎて持てず諦めた。
一緒に行った後輩と軽く熱中症になった。

天候に阻まれていなければ出発までに6回くらいは特訓ができていたはずだったが思うようにできなかった。
小川山でRPしたあと、一緒にヨセミテに行くJさんから、
「最低限のレベルはリードできてるし、他の登攀要素はバッチリだからあとは現地でクラックのトレーニングだと思って登ればいいよ」と言われ、かなり不安が消えたのを覚えている。
むしろクラック以外ではちゃんと認めてもらえてて、「こいつがパートナーなら安心して登れる」と
行ってもらえたのに等しかったため、かなりどころか舞い上がるくらい嬉しかった。

で、こういう経験状態の中でヨセミテに旅立ちました。
この中で伝えたいのはやはり
・頑張れば誰でもヨセミテに行き登ることができる
・簡単なルートでも達成感は凄まじい
ということです。
5.9が最高グレードの私でも簡単なルートでも内容的にはめちゃくちゃ楽しめたし登れました。
高グレード登らなきゃ意味がないという人もいるかもしれません。
個人的には高グレードは当時あまり気にしておらず、
「日本でできない規模のクライミングがしたい。」
「マルチピッチ全部クラックで登るなんて狂気の沙汰、どうなるの?自分どこまでできるの?試したい」
という思いを持って臨みました。

そしてもしこれを見ているあなたが今悩んでいて、
それが私と同様に「クラックが登れないから」というのが理由であれば、
その考えは捨てちゃってください。
僕も同じ理由で悩みました。まだ早いんじゃないか?とか。
そんな人にこの言葉を送ります!

「パートナー、時期、その他の条件が全部揃う時って人生一度や二度あるか無いか
 だから、行けるなら絶対行った方がいいよー!」 by 私の山の大先輩より

この言葉を聞いたあと色々考え、やっぱり今行かないと絶対後悔するなと思ったので僕は行こうと決断するきっかけになりました。

ギア編
さて話は変わって持って行った装備等についてです。
僕の荷物は機内持ち込みのバッグ一個、スーツケースは2つ
Jさんは100リットルザックとスーツケース1つ
僕のスーツケースは1つは全て登攀用具、もう1つは日本から使えそうな食料や寝具、着替え
スーツケースは1つ20キロまでです。
ライミング用品に関しては2人で合わせてのセットです。

下記写真は実際に登り終わった後、荷物を広げていた写真です。
IMG_5797.jpg

カム:
0.1~0.5番まで2セット、番手によって重複あり(BDX4、エイリアン、メトリウスマスターカム)
0.75~3番まで4セット
4番3セット
5番2セット
6番1セット

ナッツ:1〜10まで2セット(BD社とDMM社)

ロープ:
シングル 50m x1, 70mx1 (シングルは50m、マルチは70m)
ダブル 50mx1 (シングルと合わせてバックロープとして使用)

クイックドロー:20本くらい
スリング:200cm, 180cm, 120cm, 90cm、太さ等も様々なものをあるだけ持って行きました。

ヘルメット、クライミングシューズ、確保器、安全鐶付ビナ、通常ビナ等も全て持って行っています。。

実際にショートルート登攀前(左)とトゥオルミメドウでのマルチ登攀前(左)のセットの写真です。
マルチに関してはこれ以外にすでにハーネスにつけているものもありますが、
ルートによって使用しないものは車内に置いてきているため、全てではありません。

IMG_1492.jpg IMG_1523.jpg

マルチ用ロープは80メートルあると良いです。70mだと不安なところが何点かありました。
カムは全番手2セットは最低必要、安全で見るなら3セット(5番、6番を除く)あると安心かもしれません。

準備編はこれくらいですかね。なんか忘れてるものもある気がするがまぁ参考程度にご覧ください。